第31話   茸竹(ミミタケ)    平成26年05月31日  

以前から探していたこの聞き慣れない茸竹(ミミタケ)と云う言葉は、ある日突然根上吾郎・随想 庄内竿の根(上林の芋尻)の中に発見した。この茸竹と云う名の竹の名前を初めて聞いたのは、二年ほど前少し長めの根曲り竹を鳥海山の中を探し回っていた時の事であった。遊佐の広野地区の畑の中の根曲り竹と思しい竹藪があり、その持ち主に竹の名を聞いたのが初めてであった。その畑の持ち主に聞いたところ、この竹は根曲り竹と云わず、根曲り竹より弱い竹で茸竹と云うのだと聞いていると説明してくれた。それでその竹を採るのを諦めた経緯がある。しかしその「随想 庄内竿」の説明によれば、同じ根曲り竹で節から生えた竹でなく、株立ちで生えて来た竹を茸竹と云うと出ている。しかもその竹は株立ちで芋根だと云う。
 結構昔から昭和の名人山内善作などが、船釣り用にと根曲り竹を使って竿を作っていたと云う話を聞いた事があったので、興味半分に何時か竿でもと採っていた竹があった。その竹は根曲り竹と云うだけの事があり、地面の近くで急に根が極端に曲がっている。そしてその堅い根は石ころが多い山の斜面に生えている為、残念ながら掘る事がかなわず途中から切ってしまった。当時竿にする為にとっておいた根曲り竹二本を加茂の水族館館長の村上龍男氏に差し上げた。すると館長は早速一週間もたたないうちにその竹を使って水族館に展示するソイ等を釣る為の釣り用の中通し竿を作ってしまった。
 館長の出来上がったその竿は一間と少しの長さの竿と一間半の竿であった。その竿は穂先側を堅目の矢竹を用い少し長目にして竿の調子を調整し、地面に近い根の部分には堅木を差し込んで根を作り竿の握り具合を調整し、立派な竿として仕上げてしまった。根に堅木を差し込むと云う技法は、庄内竿では往々にして使う事がある。しばしば庄内竿の上部の竹が良いのに、根の形があまり良くないと云う事がある。そんな時竿師は、上だけ生かして、根の部分に自分で作った堅木の根を差し込んで、真鍮パイプを使ったり、その上に糸を巻き、更に漆をかけたりして補強し実践の使用に耐えるようにした竿が少なからず残っている。差し込みを中途半端に作ったものは、魚が釣れた時に往々にして、継いだ部分からポキッと折れてしまう事がある。
 茸竹が根曲り竹と同じものであり、しかも根が芋根と云うのであれば、今年の晩秋の竹取りが楽しみである。